昼過ぎに、団子屋でボーっと団子を食っていると、前から歩いてくるアイツを見つけた。

 その姿をボーっと目で追っていると、




「何ヨ?ドS馬鹿、キモイからこっち見んな」

 その視線に気付き、ツカツカと俺の前まで歩いてくる。




「お、誰かと思えばチャイナ。お前なんて全く見てねェよ…自意識過剰も大概にしろィ」







 コイツの顔を見ていると、つい苛めたくなる。




 ガキじゃああるまいし、好きな奴を苛めるとかアホらしい…



「アアン!!いい度胸してるじゃねぇか!!表出ろヨこの野郎ッ!!」


「何言ってんでぇ。ここは最初から外じゃねぇか」


「つべこべ言うなヨ。私が言いたいのはアッチの空き地の事アル」


「あぁ、そういう事かい。もう少し、普通の奴にもわかる喋り方しろよ…あ、おばちゃん勘定」






「ブッ殺す…」


 ゆっくりと支払いをしながら、アイツの顔をチラリと見ると、怒り心頭で俺を睨みつけていた。








 これだから、やめられねーや…

















「サッサと歩くアル。あの空き地なら存分にお前を痛めつける事が出来るヨ」



「言葉を間違えるんじゃねぇよ。痛めつけられても、誰にも見つからない所だろ」






「ハンッ。私は負けないネ。テメェには絶対に負ける訳ないアル!!」




 そう言って、ズンズンと人気のない所へ進んでいく。


 強いと言っても、一応、おめぇも女なんだから気をつけろぃ。







「オイ、空き地ってココじゃねーのか?この近くにはココしか俺は知らねェが」



「ち、ちょっと、ウォーミングアップでオーバーランしただけヨ」




 頬をプーっと膨らませて必死に言い訳をする。








 マジかわいいじゃねぇかコノヤロー


















「で、何で勝負をするんでぇ」



「何でも良いアル。それくらいのハンデは与えてやるヨ」





「じゃあ、我慢比べにしやしょうか」




「望むところネ。で、どんなルールアルか?」






 俺の言葉に全く警戒せず即答してくる。

 だから、俺はジッとアイツの目を見つめて





「逃げない。それだけでさぁ」



「簡単ネ。それぐらいどうって事ないアル」





 やっぱり乗ってきやがった。

 ほんと、コイツの将来がマジ心配になるぜ…



 そんな俺の気持ちとは裏腹に、ワクワクした目で俺を見つめて来る。








 期待に応えるべく。


 俺は空き地の地面に丸い円を描き、




「この円から出たら負けでさぁ。単純だろ?」




 アイツは、俺に対して鼻で笑い




「フン。単純過ぎて、お前にお似合いのお遊びネ」


「そうかい。じゃあ、円の中に入ってくれ」





 アイツの手を引いて、円の中に入れた。














「何でお前が先攻ネ?」




「ゲームを決める位じゃあ、全然勝てる気がしねぇんだ。だから、もう少しハンデくれよ」


 俺が、いかにも弱々しい顔をしてアイツを見る。






 すると、しかたないなぁという様な顔で、



「しょうがないアル。今回だけネ」







「ありがてぇ」




 俺が笑顔で返すと










「バッチ来いヨ」



 アイツは気合を入れて、足に力を込めて構えた。

 俺はその姿を見て、




「じゃあ、いきやすぜぇ」




 そう言って、一気に距離を縮めて殴りかかる。
 右左のパンチを繰り出すが、全て余裕の表情で避けられた。


 一瞬の隙をついて、刀の柄に手を持っていき、奴がそれに気を取られた時…



















 ガラ空きの








 アイツの右耳を甘噛みする。







 気持ちいい位に上手く決まり、
 トドメとばかり追い打ちでペロッと舐めれば、









「ひぃひゃあああああああああああああ!!!!?」





 吹っ飛ぶ様に円から飛び出た。



 円どころか、空き地の外の壁を粉砕して止まる。






「な、何するアルかッ!!」



 俺の前に走って戻って来ると、手をワナワナとさせ、


 烈火の如く俺に詰め寄って来る。







「そりゃあ、あれでぃ」


「あれって何ネ!!」





「可愛い耳たぶだったんで、つい」




 その言葉を聞いたアイツは、慌てて右耳をサッと隠す。






 口元がニヤけてくらぁ

















「きょ、今日のお前、おかしいアル!!頭でもわいてんじゃねぇのカ!!!!!!!」








 わいてるたァ…


 さすがの俺もカチンときた。







「オメーに言われたくねーんだよ、テメェの耳たぶのせいだろ」



「ふざけろよ!!何で私のせいアルか」






 イライラした気持ちが抑え切れなくなり、










「ハァ!?好きな女が目の前にいて、襲うなっつー方が無理でィ!!」
















 って、言っちまった。








 一瞬ポカンとしたアイツは、

































「…おま、お前にだけは襲われたくないアルゥゥッ!!」














 いきなり大声で叫ぶと、真っ赤な顔のまま、走り去った。























 俺はそれを呆然と眺めて、











「ヤベェ…マジ死にてぇ」




 その場にしゃがみこんだ。




















































「はぁはぁはぁ」




 全力疾走でココまで来たからもう追って来ないはずネ。








 だから、




 とまれッ!!






 とまるアルッ!!








 全然、心臓のドキドキが収まらないヨ…




 走るのを止めたのに、


 何でッ!!





「何で、サド丸の顔が浮かぶアルかッ!!」





 心臓のドキドキがさっきよりも早くなって、胸が痛くなってきたヨ…


 右耳に手を持っていきソッと触れる。






「アイツのせいネ!!」






















 心臓のドキドキがまた一段と早くなった。














 戻る




inserted by FC2 system