『 今日の東京のお天気ですが、本日は一日、初夏の陽気でルンルン気分になる模様でございます 』




 あ〜、頭痛ぇ…

 毎朝タイマーセットしてあるテレビがついた。



 やっぱり、朝一番で結野アナの声聞くとやっぱりヤル気がわいてくるぜ。

 にしても、頭痛ぇ…



 俺は、6畳一間の部屋の中に転がっている、酒瓶の群れを見て、溜息をつく。

 昨日誰と、呑んでたっけ?
 ヅラ?だったっけな…


 ヅラは俺の学生時代からの腐れ縁で今でも繋がってるヤツだ。

 今、若頭やってる。



 ボーっとする頭で、テレビを見ていると、かすかにシャワーの音がした。

 ヅラの野郎、何勝手に風呂入ってんだよ。
 今日は、アイツの奢りでパチンコでも行くかな?

 “CRキャッツパンチ”が出てるんじゃね?

 これ絶対にフィーバーだわ。

 ドル箱積み上げて、今日の夜もパーっと宴会だな。



 そんな事考えてると、天気予報も終わり、




 『 それでは!結野アナの、ブラック星座占いでございます 』



 よし、これで朝一番の運だめしといくか。


 やはり、ヅラもある程度勝たないとフィーバーしてる俺にたかりに来られてもダリぃから、

 少しくらいは当たってくれねぇとな…




「お〜い。ヅラ〜早くこっち来い」


 あれ?ヅラって何座だ?
 俺は、大声でヅラを呼ぶ



「ヅラー!!早く来いってヅラー!!」




 『 今日、一番ついていない方、天秤座のアナタです 』



「おいおいマジですか」


 俺は、頭を抱える。

 何か頭がガビガビするが、気にせずヅラを呼ぶ。
 ヅラが一位だったら、ドル箱を何箱か貰えばいい訳だしなぁ。






「おいヅラー」


「ヅラヅラ、五月蠅いのう。わっちの髪の毛はヅラでは無いぞ」
















 そう言いながら、目の前に現れたのは、どう見ても風呂上りの大人の女だった。










 『 特に天秤座でモジャモジャ頭の死んだ魚の様な目をしているアナタ 』













「へっ」






 目の前の女は、ぶかぶかのカッターシャツに身を包んで、肩にバスタオルが掛かっている。
















 茫然とその姿を見ていると、







「どうしたんじゃ、銀八」







 『 とびきり不条理な目にあって 』







 俺は恐る恐る、女に問いかける





「いや、どうしてオメェが…」



「何言ってんるんじゃ。昨日、共に一夜を過ごした仲じゃろうが」
















「えええええええッ!?」







 『 死ぬほどの困難に見舞われま〜す 』





 死ぬほどビックリした俺に、冷たい眼差しで見つめてくる、女の名は月詠。

 同じ高校の教師で担当は体育だ。




 いやぁ、こんなに生々しい女を見るの久しぶりな気もするんだが…















 って…



 オレ………





 やっちゃったの!?






「いやいやいや、ありえないよ〜。銀さんのマグナムはまだ発射されてないからね〜」


「どこが、マグナムじゃ。どう見積もっても水鉄砲じゃろ」




「………」










 『 それでは、素敵な一日を! 』







 いやいやー絶対ありえないわー。
 俺、覚えてないしー


 ってか、やってないもん。

 俺のマグナムは、安全装置ついてるもん。暴発しないようにさぁ…




「ちょっと待て、月詠。昨日の事を思い出させてくれ」


「何じゃ?往生際が悪いのう」




 俺は、痛む頭をフル回転させて思い出す。




 夕方からヅラと二人で呑んでて…

 ヅラが帰った後に



 夜中、月詠が






 来たか?


「いや、来たとしよう。いや来た事でいい。だけど、やってない。無実で無罪だ」


「それなら、証拠を見たらわかるじゃろ。わっちの純潔の華を散らした証拠を」



「何?その生々しいBL本の中でしか使わない様な言い方…やめてくんない」






 そう言って、月詠は俺の座っている掛け布団をサッと引っぺがえす。


 俺は、一度目を閉じ、恐る恐る敷布団のシーツにゆっくりと目をやる












 すると、目の前にあったのは





























 シーツ一面の血の海だった…

















「ありえねー!!!!どう考えてもおかしいでしょ?こんな血が出ねぇ事ぐらいわかるよー銀さん!!
 それにさー、さっきから俺、頭痛い痛いって思ってたけど、おかしくね?

 鏡見てみたんだけど、銀さんの髪の色、銀髪でしょ?白毛でしょ?でも、今の髪の毛の色、真っ赤じゃね?
 赤い彗星がビックリするくらい赤くね?どー考えても、俺の血だよなこれ、

 目の前の酒瓶、一本銀さんの髪の毛と一緒に、血がベッタリついてるし、犯人無自覚だしさぁ!!」




 早口で、俺一人、一気に理由を述べる。

 いや、誰が見ても、これは俺が正しいよね?
 間違ってるの銀さんじゃないよな?



 だが、月詠は、俺の顔をみてヤレヤレと溜息をつき


「男はいつもそうじゃ。自分に都合が悪くなると、逆切れするでありんす」

「何が逆切れだよ。どう考えても逆じゃないし、キレてもねぇ」



「それじゃあ、昨夜の事は認めてくれるんじゃな?」







「だーかーらー」



 俺が、その後を続けようとするとすかさず









「ぬしとの婚姻届ももうできておる」





 そう言って婚姻届を見せてくる






















「って、俺の印、血判じゃね?頭殴って、滴った血を付けて押したろッ!!」
















 やべぇ、ツッコミ所が多すぎて、俺じゃあ対処しきれねぇ…







 『 次のニュースです、かぶき町の雑居ビルの一室で、2人の遺体が見つかりました 』





 血が固まってバリバリになっている頭を掻いて、

 俺は、溜息をつき






「じゃあ、いいんだな?」




 『 遺体は中華系マフィアの人物と見られ、身元の確認…… 』





「なっ、いきなり何、言ってるんじゃ!?うわッ」






 月詠の不意を突き、床に押し倒す。



「昨日もやった仲じゃねぇか」

「ちょ、銀…今、朝じゃろ…」



「ちょっとだけ、ちょっとだけだって」




 そう言って、月詠の体に俺の手が触った瞬間











「何さらしとんじゃァァァァ!!!!」





 「 バチコンッ!! 」 と、鈍い音で吹っ飛ばされた。























 『 現在木戸組との抗争が激化しており、その抗争での…… 』










 ちょっとしたオチャメだろ?やり過ぎじゃね?





 流石の銀さんも涙…

 あれ?涙がとまらないよ…





「やっぱり、俺とは何もなかったんだな?」








 カッコつけて、そう言うと




「銀八…涙、拭きなんし」


 マジ、カッコ悪くね?





「ダメだ、俺恥ずかしい。もう、出てくわ」

「ちょ、ちょっと待ちんす!!」





 月詠は、慌ててそう言いながら、煙管に火をつけ




「銀八…学校の裏サイトで、ぬしは何と呼ばれているか知っておるか?」


 今、高校生の間で流行の裏サイトって奴だな?



「別に、興味はねぇよ」

 俺が、そう言うと、煙管の煙を吐き出して
 そして、意を決したかの様に






「ロリコン教師と…」


「えええええええええッ!?」



 俺、何か悪い事した?
 別に、平等に、適当に仕事してるだけなんだけど…


 俺の方が、不登校になるぞ、ほんと…


「そして…、留学生と…デキていると…」


 そう言って、俺が凹んでいる事は無視して、月詠は自分の携帯を投げて渡してくれた。

 そこに映っていたのは、俺と神楽が一緒に歩いている写真や、国語の準備室に入る所が映っていた。



 誰かが、意図して撮ったんだろうな…


 俺は写真を見て、月詠に携帯を投げ返す。


「アイツとはそんなんじゃねぇよ」




 そう一言告げ、部屋を出ようと歩き出すと、背中に月詠が声をかける








「これが意味する所を分からぬ、ぬしではあるまい」



「だから、俺はロリコンじゃねぇって言ってんだろ」







 俺は首だけ月詠の方に向け、軽く溜息をつく。











「そうではない」


 月詠は煙の出なくなった煙管を少し指で遊び、
 その後、煙管を軽く叩いて灰を落とし俺の目をジッと見つめ







「奴らにバレるのも、時間の問題だって事じゃ」





 なるほどね…
 そりゃあ、ヤバイんじゃねぇか。




「で、ぬしは何を起こす気じゃ?」






「…大フィーバー起こして来るわ」


 そう言って、胸ポケットから煙草を一本出して火をつける。




「気をつけなんし。奴らは、犯人を血眼になって捜しておるぞ」

「そりゃあ、たかられない様に気をつけねぇとな」





 そう言って、後ろ手でヒラヒラと手を振り、部屋を後にした。


 ムッとする暑さに少し怯むが、気を取り直し、大きく伸びをして、コキコキと首を鳴らす。












 銀さんも、ちょっと本気をだしますか………






































 残された部屋で、月詠は新しい煙草を詰めて、火をつけ





「ったく、ぬしもアイツらも世話がやけるのう」


 そう言って一服すると、もう雑音にしかならないテレビを消し、窓の外を見た。







「今日も、暑くなりそうじゃな」
































  
 銀八
  天秤座でモジャモジャ頭の死んだ魚の様な目の男。



  
 月詠
  好きな酒の呑み方は、人の頭を酒瓶でスパーキング。











 010








  パラレル編の9話目です!満足していただけましたでしょうか?

  沖田も神楽も出ないで連続2話来ましたッΣw;
  分岐として大切な話なんで、
  もう少し沖田と神楽を取り巻く人々の動きにお付き合い下さい。

  もしこの話でアハ体験された方、よかったらご一報くださいッ☆
  お待ちしております^^







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