俺の足取りは重かった・・・

 帰った所で、答えなんてでねぇよ・・・




「私はどうアル」


 その言葉が、とても重くのしかかっていた。



 気の早い蝉が 「ミーンミーン」 と鳴き出している。

 考えるのもダリーぜ・・・








 極力帰るのを遅くしたかったので、コンビニに寄り、数冊の本を立ち読みして帰る。

 店員の痛い視線を感じるが、この後の事を考えると、全く気にならなかった・・・






 そして、答えが出ないまま、自分の家の前に着く。

 こんなにドアノブが重いなんて今まで全く感じなかったぜ・・・


 俺は、気を引き締めてドアを開けた。


 すると・・・


「総ちゃん遅かったわね。またコンビニ行ってたんでしょう」


 柔和な声が俺の耳を叩く。




「ね、姉さん!?」


 俺は混乱した。




 アイツは・・・


 チャイナは!?



 焦って、部屋を見回すと、姉と一緒に台所に立っていた。




「違うんだ。姉さん!!」


 俺は精一杯否定をする。

 こんな時にバレてしまうなんて・・・




「何が違うのかな?総ちゃん」

 笑顔で問いかけてくるから性質が悪い。




「いや・・・だから・・・コイツは・・・」


「コイツじゃないでしょ。神楽ちゃんに向かってメッ」



 俺が小さくなっていく所を、後ろでチャイナは笑いに堪えて俺を見ている。





 チャイナめ・・・絶対に覚えてろよ・・・



「こんな可愛い彼女がいたんなら、紹介してくれてもいいじゃないの。別に、姉さん反対なんかしないのに」



 そう言われると、俺はグウの音も出ない・・・


 そう言って、姉は、チャイナの方を見て二人笑顔で 「ねっ」 と合わせる。

 二人でタッグを組むなんて卑怯だ・・・





 俺は呆然と立っていると


「総ちゃん。こんな所に立ってないで、手洗い、うがいしてきなさい。」


 そんな二人に翻弄されながら、部屋に入り、夜のニュースを見ている。

 すると 『中華系マフィアがこのかぶき街で勢力を拡大している』 とか言うニュースが流れている。




 それよりも、俺のこの家での勢力図がとても劣勢になった事について論議したいぜ・・・






 二人は、笑い声をあげながら、夕飯を作っている。


 この匂いからするとカレーか・・・



 俺は、ボーっと飯が出来るのを待っていた。





 すると、チャイナが俺の傍に来て声をかけてくる



「お前の姉ちゃんメッサいい人ネ」



「まぁな。俺の自慢の姉だからな」


 俺は、自分の事の様に威張って見せる。




「・・・シスコン・・・」


「テメッ!!何て事言いやがるんでぃ!!」


 そう言って、アイツのオデコを強くツツく。



「痛いアル〜。ミツバ姉ぇ〜総悟がオデコ、ツツいてくるアル」



 そう姉に向かって、大声で叫ぶ。





 汚ねぇぞ!!




「ダメよ。総ちゃん。女の子は優しく扱わないといけないのよ」


「そうアルよ。もっと優しく扱って欲しいアル。ミルミル、コンビニまで買って来いヨ」



 笑顔で、俺に言ってくる。



 やっぱり、どう考えてもこの場所は劣勢でさぁ・・・









 俺が、ゲンナリとした顔でテレビに目を向けた時、アイツもテレビを見たまま俺に話しかけてくる。






「ウチの家族も仲良かったアル。パピーもマミーも優しかったし、兄ちゃんもいい奴だったアル」






 オレも、テレビを見ながら、

「じゃあ、何で、こっち来たんだよ。家族と一緒にいりゃいいじゃねぇか」








「・・・・」






 アイツは、いきなり無言になり、俺は焦ってアイツの顔に目をやる。













 すると、涙が目から溢れださない様に必死に堪えて下唇を噛んでいるアイツの姿が目に映った・・・









 俺は、無言に耐えきれなくなり、声をかける




「おい・・・」










「マミーは死んじゃったアル。それと同時にパピーもほとんど家に帰ってこなくなったヨ。それに兄ちゃんは・・・」

























 アイツの震えた声が、涙声に変わり、堰を切ったかのように大声で泣き出す。

























 俺は、どうしたものかとオロオロとするしかなかった。







 そこに、姉さんがやって来て、俺には何も言わず、アイツの肩を抱いて胸を貸す。


 とても、優しい笑顔で 「大丈夫よ。大丈夫だから」 そう言い続けて頭を優しく撫で続けた。












 溜まっていたものが全て出しきれたのか、アイツは姉に笑顔を向けて 「アリガト」 と言った。







 俺が今まで、一度も見たことのない、いつも気の強いアイツとは同じ奴とは思えないくらい可愛い、

 見ているコッチが、くすぐったくなる様な笑顔だった・・・








 それまで、呆然としていた俺だが、姉が笑顔で俺を見つめ、





「女の子にはこうしてあげないといけないわよ。いつも優しく大事に扱ってあげるの。

 私だって、十四郎さんに優しくしてもらってるから、幸せなのよ」




 姉さんの顔は、今は居ない土方を思い出し嬉しそうな笑顔だった。


 でも、ここで、忌々しい名前が出て来て俺は自分でも分かるほどイラついた。









 今の俺は、アイツが泣いた時、どうしていいか分らずにオロオロする事しか出来なかった。


 だが、土方のアンチクショウなら優しく慰めてやったんだろうか・・・

 何か、格の違いを見せつけられた様で悔しいかった。








 俺が一人、そんな思いに耽っていると、


「お前も・・・アリガト・・・ネ」






 少し照れながら、俺に向かって言ってくる。

 その目は、泣き腫らしており真っ赤だが、俺は、出来る限り平静を保って



「その、悪かった・・・な・・・」 と呟いた。











 そしたらアイツ



「ま、お前は何もしてくれなかったダメオだけどな」




 と馬鹿にした声で俺を見下してくる。








「何だよ!!俺が悪かったって謝ってるって言うのによぉ」



 俺は少し口を尖らせる




「お前、キショイアル」

「テメェの鼻水の方がキショイってんだよぉ」



 俺達は言い合いが過激になっていくと、手に小皿を持った姉が




「ほら、総ちゃん。神楽ちゃん。カレー出来たから味見してみて」



 と、皿を二人の目の前に差し出した。

 いい匂いが腹を刺激する。



「ほら、ご飯出来たわよ。仲直りしない子にはご飯ナシよ」





 その笑顔で、俺達二人は目を合わせ仲直りをした。








 出来上がってたカレーを姉が人数分よそう。


 アイツはそれを手伝ってスプーン・グラスを食卓に並べ、俺は出来たカレーを運んで、俺達は食卓を囲んだ。



 やはり、姉さんと飯を食うとなると、楽しいや・・・





 そう思った矢先、ドアホンが鳴り、人が入って来る。


 俺は、死ぬほど後悔した・・・

 コイツの出現を考えていなかった・・・





「よぉ。総悟元気にやってるか」


 煙草をふかしながら、俺に言ってくる。


 飯がまずくなる・・・

 俺が、無言でいると、土方はアイツを見つけ




「オメェ誰だ?」

「誰だって聞くときは、自分から名乗るのが礼儀アル」



 そう言って、アイツにメンチを切る。

 アイツは、煙草の煙をフーっと吐き出して。




「俺の名前は土方十四郎だ。ミツバの夫で、まぁそこの出来そこないの兄だ」


「おぉぉ、トッシーアルか。私、神楽ネ」



「このエロガキが。女、部屋に連れ込みやがって、挙句、同棲かよ」


「総悟にはいつもお世話になってるネ」


「まぁ、十四郎さん、私に妹が出来たわ。だったら、カレーじゃなくてお赤飯炊いたのに」



 オイオイなんで、三人で和んでやがるんだよ・・・

 ってか、俺一人仲間外れか?


 ちっ居心地が悪いったりゃあありゃしねぇぜ・・・





 女ふたりは、土方の分のカレーを温めなおしに行っており、部屋には、俺と土方の二人しかいない。


 俺の家だったのに土方の野郎がなんで当たり前の様に中心にいやがるんだよ・・・

 土方は堂々と食卓の上座に座って煙草をふかして頬づえをついてテレビをみてやがる。




 そんな時、アイツが何気なく俺に話を振ってきた。


「おい。お前、近藤さんの道場ちゃんと行ってるか?」





「あっ?忙しいんで行って・・・やせんけど・・・」

















「そうか。じゃあ、聞くが、あの女・・・神楽って言ったか?アイツの事どう思ってるんだ?」






「はぁあ」



 アイツがニヤニヤしながら、俺の答えを待っている








 本当にムカつく野郎だぜ・・・





「・・・恋人でもなんでもねぇ。勝手に俺の所に転がり込んで来ただけでさぁ」







 俺とチャイナの関係は・・・何でもねぇ。だから、そう答えた

























「じゃあ・・・・・・」























 勿体ぶる様に、新しい煙草に火を付けて、煙を吐き出した。


























 「早いところ追い出せ」





















 その言葉を聞いた途端、周りの時間が止まった様に思えた。












 何言ってんだよコイツ・・・

















「女を守れねぇ奴は漢じゃねぇからな」













 自慢じゃないが、普通の奴よりは強いって自信は持ってる。


 俺に守れない訳がねぇ・・・








 だが、アイツは俺に向かって意図が読めない眼差しで言ってくる。

 さっきまでの馬鹿にした顔ではなく、俺でも分かるほど気を遣った顔で言ってくる。







 俺は、その顔をじっと睨むしか出来ない
















 アイツは、不味そうに煙草の煙を吐きながら、俺から視線を外し静かにゆっくりと言葉を紡ぎ出した。











「これは、兄として助言してやる。好意をもつ前に接点を全部取り払え」








 俺が、反論しようとした時





「はい十四郎さんの分のカレーも出来ましたよ」




 と、笑顔で女ふたりが戻ってくる。










 何だよ・・・助言って、テメェにだけは言われたくねぇよ・・・














「カレーにマヨはあうんだぞ」


「マジでか!?」



「神楽ちゃん唐辛子もあうわよ」


「辛いアル。でも旨いヨ!!」





 まるで何年も前から知り合いの様な楽しい食卓になっている。

 楽しい夕食だ・・・俺を除いては。





 俺は、アイツの言った言葉が妙に引っ掛かっていた。

 もし、またチャイナが危険な目にあったら、俺は助けてみせる・・・



 はしゃいでるアイツを横目に俺はカレーを口にかき込んだ。













 多分俺は・・・










 チャイナが好きなんだと思う
































  
 沖田総悟
  好きなカレーはド普通なカリーw



  
 神楽
  好きなカレーは食えればなんでもいいw



  
 ミツバ
  好きなカレーは唐辛子入りカレーw



  
 土方十四郎
  好きなカレーはマヨカレーw







 008









 パラレル編の7話目です。満足していただけましたでしょうか?

 はぁーやっと・・・やっとこさ総悟が神楽ちゃんの事を意識し始めました!!
 やっと・・・やっとでした orz
 ミツバさんの天然っぷりと、土方のマヨっぷりにも注目です(笑)

 もしよかったら感想くださいvお待ちしております煤O^










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